中古艇比較
【ステップアップ編】人気中古艇7選|本格フィッシャーから海上の別荘まで
予算が一段上がると、船選びはもっと面白くなる。
数百万円台の中古艇からステップアップを考えたとき、どんな世界が広がるのでしょうか。
本格的なディーゼルフィッシャー。最新の電子操船技術を備えた大型船外機艇。家族と宿泊できる欧州クルーザー。そして、海で遊ぶことを徹底的に追求したアメリカンボート。
中古艇市場では、2,000万〜4,000万円程度の売出実績があるモデルを中心に、こうした個性豊かな船を比較できます。
もちろん、すべてのモデルが常にこの予算で購入できるわけではありません。年式や装備、機関の状態によって価格は大きく変わり、流通数の少ない輸入艇では、過去の掲載実績が現在の相場を表すとは限りません。
このクラスの面白さは、単に船が大きくなることではありません。
釣りに徹底的にこだわるのか、移動中の快適さを求めるのか、船内での滞在を楽しむのか。
同じような予算でも、目指している休日がまったく違うのです。
今回は、国産艇5モデルと海外艇2モデルを取り上げ、それぞれの設計思想、魅力、実際の使い勝手、購入前に知っておきたい弱点を紹介します。
01
ヤンマー EX28C
大きすぎない本格派。毎週釣りに出る人のための実力艇
基本スペック
- 全長8.95m × 全幅2.74m
- 250馬力ディーゼル船内機/シャフト推進
- 燃料265L
- キャビン、イケス、広い前後デッキ
EX28Cは、28フィート級の船体に本格的な釣り性能を凝縮したモデルです。
大きなスクエアバウ、移動しやすいサイドデッキ、広いアフトデッキ。
豪華な室内よりも、釣り場での使いやすさを重視しています。
大型艇のような設備を増やすより、扱いやすいサイズで釣りの完成度を高めたい人に魅力的な一艇です。
乗ってわかる、船のこだわり
① 船の中からプロペラを点検できる。
EX28Cには、船尾にプロペラ点検窓があります。
シャフト艇で気になるのが、プロペラにロープや釣り糸などを巻き込むトラブル。
点検窓から状態を確認できる構造は、釣り人にとってありがたい装備です。
もちろん、絡まったものを必ず船内から除去できるわけではありません。安全を確保したうえでの点検が前提です。
② ハッチが用途別に整理されている。
イケス、収納、操舵機やプロペラ周辺の点検箇所が分かれています。
魚を入れる場所と、釣り道具や機械を管理する場所を整理しやすい設計です。
ハッチの配置は地味ですが、釣りに行くたびに何度も使う部分だからこそ、便利さを実感できます。
02
ヤマハ YFR330
450馬力の船外機と最新技術。釣りの行動範囲を広げる一艇

スタンダードの製品ページのメイン写真。
基本スペック
- 全長10.10m × 全幅2.99m
- 450馬力船外機1基
- 燃料650L
- キャビン、イケス、広い前後デッキ
- 電子制御操船システム
2024年に登場したYFR330は、走行性能と釣り場での操船性を追求した大型フィッシングボートです。
450馬力の大型船外機と専用設計の船体を組み合わせ、高速移動の快適さと釣りのしやすさを両立。
朝の限られた時間に遠方のポイントを回りたい人や、積極的に魚を探す釣り方に向いています。
乗ってわかる、船のこだわり
① 大型艇でも、流し釣りのしやすさを追求。
大きなキャビンを持つ船は、風の影響を受けやすくなる傾向があります。
YFR330では船体形状や重心バランスを調整し、風による流されやすさを抑える方向で設計されています。
大型の船外機艇でありながら、流し釣りまで考えているのが興味深いところです。
② 電子制御で操船を支援する。
ヘルムマスターEXなどの操船支援システムを採用。
対応する仕様では、ジョイスティック操作やバウスラスターとの連携によって離着岸を補助できます。
大きな船を扱う際の負担を減らすための技術ですが、搭載機能は個体によって異なります。
中古艇では、操作機能の有無だけでなく、実際に正常作動するかを確認したいところです。
03
ヤマハ DFR-33
釣りを知り尽くした人にこそ伝わる、細部の完成度

製品ページのメイン写真。
基本スペック
- 全長9.97m × 全幅3.20m
- 440馬力ディーゼル船内機
- 燃料530L
- 大型キャビン、個室トイレ、バウバース
- 大容量イケス、トランサムゲート
DFR-33は、長時間の本格的な釣行を想定したフィッシングクルーザーです。
ゆとりのあるデッキ、快適なキャビン、大型のディーゼルエンジン。
その中でも特に魅力的なのは、釣りの最中に感じる細かな使い勝手です。
乗ってわかる、船のこだわり
① イケスは、あえて2枚蓋。
大型のイケスには、2つに分けたハッチを採用しています。
片方だけ開けられるため、毎回大きな蓋を開く必要がありません。
さらに専用の排水キャップには、航行中の排水で魚が張り付きにくくなる工夫もあります。
イケスは単に容量が大きければいいわけではありません。
魚を入れる、取り出す、水を抜く。
その一連の動作を考えた設計に、本格フィッシャーらしさを感じます。
② 大物を船縁から持ち上げなくていい。
船尾左舷には、魚の取り込みを考えたトランサムゲートがあります。
大きな魚を高い船縁から無理に持ち上げるのではなく、ゲートを使って取り込める構造です。
大物を狙う人ほど、その便利さが想像できるのではないでしょうか。
04
ヤンマー EX34FB
海を見渡す高い操船席。魚探しから始まる贅沢な釣行

記事が EX34 ハードトップとしている写真。
基本スペック(EX34・FB仕様)
- 全長10.63m × 全幅3.30m
- 440馬力ディーゼル船内機/シャフト推進
- 燃料650L
- フライングブリッジ、キャビン、広い釣りデッキ
EX34FBの最大の特徴は、キャビンの上に設けられたフライングブリッジ(FB)です。
高い位置から海を見渡せる操船席というと、クルージングのための贅沢な装備を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際のオーナーには、釣りのためにFBを選んだ人もいます。
乗ってわかる、船のこだわり
① FBは、ナブラ探しにも役立つ。
ヤンマーが紹介しているEX34FBのオーナーは、ナブラ打ちの際に広い海を見渡したいことを、FBを選んだ理由に挙げています。
鳥の動きや海面の変化を探すとき、高い位置からの視界は魅力的です。
景色を楽しむためだけではなく、魚を探すために上部操船席を使う。
釣り好きならではの発想です。
② 船内を自分だけの空間に仕上げられる。
同じオーナーの艇では、収納、ソファベッド、エアコンの吹出口、温水シャワーなど、細かな部分まで工夫した艤装が紹介されています。
釣りをするために船を買い、やがて船内で過ごす時間まで楽しむようになる。
大型艇ならではの所有の喜びが感じられます。
05
トヨタ ポーナム31
自動車メーカーの技術を、海で楽しむプレミアムクルーザー

製品ページが PONAM-31 としている外観写真。
基本スペック
- 全長10.57m × 全幅3.20m
- 260馬力ディーゼルエンジン2基
- 燃料620L
- アルミ船体、フライングブリッジ
- キャビン、トイレ、クルージング設備
2014年に登場したポーナム31は、トヨタが走行性能と快適性の両立を追求したスポーツユーティリティクルーザーです。
アルミ製の船体、ディーゼルエンジン2基、独自の操船技術。
自動車メーカーとして培ってきた技術を、マリン分野へ応用した一艇です。
乗ってわかる、船のこだわり
① ランドクルーザー系のエンジン技術が使われている。
海外向けランドクルーザープラド系の3.0Lディーゼルを舶用に最適化し、2基搭載しています。
自動車由来の技術が生かされているのは面白いところです。
ただし、海水冷却系統やドライブ装置などには、船ならではの専門的な整備が必要です。
② 大型艇の操船を支援する技術がある。
トヨタドライブアシストやトヨタバーチャルアンカーシステムなどがオプション設定されています。
離着岸や船位保持を支援するための装備です。
中古艇では、搭載されているかどうかに加え、各機能の作動状況まで確認したいところです。
06
ジャノー メリーフィッシャー1095
海の上に、家族のもう一つの居場所を持つ
基本スペック(初代1095系)
- 全長10.45m × 全幅3.37m
- 最大300馬力船外機×2
- 燃料800L
- 2〜3キャビン仕様
- サロン、ギャレー、トイレ、広い後部座席
フランスのジャノーが手がけるメリーフィッシャー1095は、家族での滞在を強く意識したクルーザーです。
10m台の船体に複数のキャビンを設け、食事や休憩、船中泊まで考えられています。
船外機を採用することで、船内機が占めるスペースを居住空間に活用しているのも特徴です。
乗ってわかる、船のこだわり
① 後部のソファが、船外機のために前後へ動く。
船外機をチルトアップする際、エンジン上部が座席に干渉しないよう、後部ソファを前方へスライドできます。
普段は広いコックピットとして使い、停泊時にはエンジンを上げるための空間を作る。
限られたスペースを有効に使う工夫です。
② 船の左右で、移動のしやすさが違う。
右舷側には幅広い通路と操船席横のドアがあります。
操船席から直接外へ出られるため、着岸作業にも便利です。
一方、左舷側の通路は比較的細く、船の周囲を移動するときには左右で感覚が変わります。
普段利用する桟橋の向きまで考えて選びたい船です。
07
ボストンホエラー 330アウトレージ
海で遊ぶことを極める、アメリカン・スポーツフィッシャー
基本スペック(330 Outrage系)
- 全長約10.1m × 全幅3.10m
- 船外機2基(300馬力×2の仕様例)
- 燃料1,135L
- センターコンソール、ライブウェル
- フィッシュボックス、トイレ区画、広いデッキ
ボストンホエラー330アウトレージは、国産のフィッシングクルーザーとは違う魅力を持っています。
大きなキャビンよりも、釣りやマリンスポーツのための開放的なデッキ。
船の周囲を自由に移動できるセンターコンソールの構造は、アメリカのスポーツフィッシング文化を感じさせます。
乗ってわかる、船のこだわり
① 船体の横から、大物を取り込める。
左舷のサイドゲートは、ダイビング時の出入りだけでなく、大型魚の取り込みにも便利です。
高い船縁を越えて魚を持ち上げずに済むことは、大物を狙う人にとって魅力的でしょう。
② 生き餌と釣った魚を別々に管理できる。
ライブウェルは生き餌の管理に使い、釣った魚は床下の断熱フィッシュボックスへ。
移動中は座席として使っていたスペースが、釣り場では作業場所に変わります。
海で遊ぶための合理的なレイアウトです。
同じような予算でも、まったく違う7艇
同じ予算でも、釣り・航海・滞在で船の価値は変わる。
↑ キャビンでの快適な滞在を重視
← 釣り・スポーツを重視
↓ 日帰り・屋外活動が中心
クルージング・家族利用を重視 →
※設計思想・用途による編集上の相対配置です。性能順位や中古成約価格を示すものではありません。
購入時に迷う、4つの組み合わせ
どちらを選ぶかは、船の大きさより「いつ・誰と・何をするか」。
01大型フィッシャーで迷ったら
02釣りと滞在のゆとりで迷ったら
03海の休日の過ごし方で迷ったら
04船外機フィッシャーで迷ったら
※艇種の方向性を整理した比較です。流通状況・購入価格を保証するものではありません。
| 艇種 | 最も重視している価値 |
|---|---|
| EX28C | 大きすぎない船体で本格的な釣りを楽しむ |
| YFR330 | 高速移動と現代的な操船技術 |
| DFR-33 | ディーゼル艇の本格的な釣り性能 |
| EX34FB | 釣りと大型艇のゆとり、上部操船席 |
| ポーナム31 | 走行性能と上質なクルージング |
| メリーフィッシャー1095 | 家族での滞在や船中泊 |
| 330アウトレージ | 釣り・マリンスポーツの開放感 |
YFR330とDFR-33。どちらの本格フィッシャーを選ぶ?
同じ33フィート級でも、設計思想は大きく異なります。
YFR330は450馬力船外機を搭載し、高速移動や電子制御による操船を追求。
DFR-33はディーゼル船内機を採用し、大きなイケスやトランサムゲートなど、釣り場での作業性を徹底しています。
高速移動や最新の電子操船を重視するならYFR330。ディーゼル艇の特性や、釣り場での作業性を重視するならDFR-33。
エンジン方式が違うため、整備を依頼できる業者や保守費用まで比較したい組み合わせです。
DFR-33とEX34FB。本格的な釣りに上部操船席は必要か?
DFR-33は、キャビンとデッキの機能を重視した本格フィッシャー。
EX34FBは、高い位置から海を見渡せるフライングブリッジを備えています。
ナブラ探しや眺望に魅力を感じるならEX34FB。
上部設備が増えることによる保守負担を抑えたいならDFR-33にも魅力があります。
フライングブリッジは、あると嬉しい装備ですが、すべての人に必要な装備ではありません。
ポーナム31とメリーフィッシャー1095。海の上で何を楽しむ?
ポーナム31は、走ること自体を楽しむクルーザーです。
アルミ船体、ディーゼル2基、フライングブリッジ、操船支援システム。
一方、メリーフィッシャー1095は家族での滞在を重視しています。
複数のキャビン、食事のできるサロン、ギャレー、居住空間。
走る時間を楽しむならポーナム31。船で過ごす時間や宿泊を楽しむならメリーフィッシャー1095。
購入時には、国内流通状況や保守環境も含めて比較したいところです。
YFR330と330アウトレージ。日本型かアメリカ型か?
どちらも大型船外機を搭載した本格フィッシャーです。
YFR330は、キャビンの快適さと釣り性能の両立を追求。
330アウトレージは、センターコンソールと広いデッキを生かし、釣りや海上活動を楽しむ船です。
釣りと移動中の快適さを両立したいならYFR330。
ダイビングや大物釣りなど、開放的な使い方を重視するなら330アウトレージ。
どちらが優れているというより、自分が海で何をしたいかによって選択が分かれます。
ステップアップ艇で、本当に重要なこと
価格帯が上がると、購入費用以上に、所有環境の違いが満足度を左右する場面が増えます。
たとえば、船外機1基の船と、ディーゼルエンジン2基・ドライブ2基の船では、整備する機器の数も構造も異なります。
フライングブリッジがあれば清掃や保守の対象が増え、キャビンの設備が充実すれば、エアコン、冷蔵庫、給排水設備などの管理も必要になります。
一方、それらの設備があるからこそ、遠出をしたり、家族と船中泊をしたり、これまでできなかった楽しみ方も生まれます。
また、この価格帯では同じモデルでも、年式や追加艤装によって売出価格が大きく異なります。
国内で2,000万〜4,000万円程度の掲載実績があるモデルでも、状態の良い個体や新しい年式の個体は、それ以上の価格で販売される場合があります。
過去の掲載価格は参考になりますが、現在の市場相場や成約価格と同じものではありません。
購入前には保管可能な船体寸法、年間の維持費、機関の整備体制、装備の動作、実際に乗ったときの使い勝手まで確認したいところです。
ステップアップで選びたいのは、単に大きい船でも、豪華な船でもありません。
釣りをもっと深く楽しみたいのか。
仲間との時間を充実させたいのか。
家族と海で宿泊したいのか。
長距離を快適に走りたいのか。
その答えによって、理想の一艇は変わります。
船が変われば、休日が変わる。
自分が海の上でどんな時間を過ごしたいか。その未来を想像することこそ、中古艇選びの一番面白いところではないでしょうか。
※価格は国内の中古艇販売掲載実績を参考にしたものです。現在の在庫や購入可能価格を保証するものではありません。寸法・装備は代表仕様であり、年式・仕様・改造歴によって異なります。
この記事で紹介したモデル
- ヤンマー EX28C
シャフトのEXでいちばん小さい、と販売が伝えるEX28C。操舵席の天井は最大1,840mm。機関は4LV250J。全長はおよそ9m、と試乗記にある。
- ヤマハ YFR330
2024年の船外機フィッシング。全長10.10m、10人、燃料650L。国内の艇で初めて450馬力を載せた。
- ヤマハ DFR-33
2017年のハードトップ。全長9.97m、12人、燃料530L。遠方の大型魚で、走行と釣りと居住を同時にする。
- ヤンマー EX34FB
2018年、ハードトップとフライブリッジの二本。全長10.63m、最大12人、440馬力。流しならハードトップ、鳥山を追うならフライブリッジ。
- トヨタ ポーナム31
2014年のアルミのクルーザー。全長10.57m、12人、260馬力が2基、燃料620L、清水110L。エンジンはプラド系の3リッターを船用にしたもの。
